旅の1日目。
朝、うす暗いうちに起床。
夫が息子の着替えなど手伝ってくれ、
簡単な朝ごはんを持参して出発。
7時40分に最寄り駅から空港行きのバスに乗った。
ここから長い旅の始まりだ。
息子が小さい時の旅は、乗り物の中でいかに静かにさせるかを
常に考え、色々とおもちゃを持っていって、あやしながらという
旅だったので長時間の移動はかなり緊張したものだけれど、
もうそういう心配もなくなってきている。
ただ今回は大人でも大変な移動が1日続くので
ちょっと申し訳ないかしらという気持ちも。
でも、バスの中で持っていったおにぎりの朝ごはんを食べながら、
「乗り物の中で食べるのって美味しいね」の一言をもらい、
ほっとしたのだった。
千歳から関空へ。
LCAは一人手荷物1個までなので2つに分けていた荷物をまとめたり、
ちゃんと間に合わないと置いていかれちゃうかもと必要以上に早めに行動して走ったり、
機内で万札を断られジューズが買えずにガッカリするなど、
まあ色々なことがあったけれど、乗車時間なんてあっという間。
息子と風景を眺めたり、持参の間違い探しの本を一緒に楽しんだりしていたら
すぐに関空へ到着した。
ここからがまだまだ長い旅。
関空から電車を乗り継いで大阪駅へ。
お昼ごはんは駅で慌てて買ったパンと牛乳を。
パンは4つ買ったけど、息子が全種類を味見してみたいとのことで
半分以上が息子のお腹の中に入っていく。
私は、パンを食べながらも、このあたりの男子高校生の関西弁がものすごく迫力満点で、
喧嘩が強そうなので、一人でビビっていました。
新大阪から岡山へ。
息子、初・新幹線で楽しみにしていたのですが、とにかく慌てて乗ったので
先頭車両が拝めず。すまん…息子よ。
けれど、息子がきちんと旅程を理解してくれて、
急いでいるときはとにかく一緒に走ってくれたので助かった。
新幹線に乗り込んでからしっかりと感謝の気持ちを伝えておきました。
新幹線は広くて美しくて、機能的。
しかも空いていて、ここまで緊張して乗り継ぎをしていたこともあり
ホッと気持ちが安らいだ。
私は少し仕事をすることにして、
息子は静かに漫画を読んでいるなと思ったら、
心地良い揺れに身を任せて、スヤスヤと眠ってしまった。
息子も安心したのだろう。
岡山駅。
私も息子も岡山に来るのは初めて。
ここからバスに乗るのだけれど、時間が中途半端にあったので、
おトイレをすませたら、売店でキビ団子を買ってみた。
美味しいけれど、意外と普通のお餅のような…。
なんとなく子どもの頃から、猿や犬やキジまでついてくる
ものすごくおいしいお団子を想像していたのだけれど、
その味が現実のものとなってしまったことに少しガッカリしたような。
岡山の港までバスに乗る。
岡山のバス、回送のバスには「回送」ではなく「すみません、回送です」
などと書かれてあったりして、親切そうなバス会社だなあと思っていたのだけど、
私が乗ったバスの運転手さんもものすごく親切な人だった。
「宇野港へ行くのだったら、宇野駅の次ですよ」ときちんと目を見て教えてくれるのが
嬉しかった。
バスの車内には新聞が自由に読めるように置いてあったりするのにも驚いた。
ガタゴトとゆれてバスは進む。
息子はまたスヤスヤと夢の世界へ。
私は初めてみる窓の外の風景を楽しむ。
雲ひとつない空の下、日は少しずつ傾いてきて、淡い光がさして、海がきらきらと光っている。海も山もとても近い町。民家の小さな畑の敷地では、栗と柿といちじくと桜の木が植えてあって、季節ごとの果物が収穫できるらしい。「なんて豊かな季節の楽しみだろう。」と
こんなところで暮らしたらどんな風だろうなどと想像したりした。
宇野港へ到着。
もう日がだいぶ傾いてきた。海からの風が少し冷たい。
ここまでずいぶんと移動したけれど、これで最後の乗り換えだ。
ここからフェリーで直島へ渡るのだ。
小さな港でフェリーを待つ間、息子と二人で「だるまさんがころんだ」をした。
乗り換えの間に体を動かさないと、息子にはつらいだろうな思ったけれど、
体を動かすのが大好きな息子は予想通り、きゃっきゃと喜んで走り回っていた。
小さなフェリーがやって来た。
フェリーが着岸すると、人がずらりと横一列に並んで待っている。
作業着姿の人、スーツの人などいろいろな人がピシっと立っている。
その後ろには車が控えていて、なんだかカッコイイ瞬間だ。
港側は私達の他に、制服の女子高生やスーツ姿のおばさんらが並んで待っている。
「人と車と一緒に乗ってるんだねー」と息子が感心していたのだけど、
私は同じような夕焼けの下、車もバイクも人もごっちゃになって乗った
ベトナム・メコン川での小さな船を思い出した。
そして、いろいろな国の、船が身近にあるという暮らしを少し想像してみた。
フェリーの乗車時間は20分だ。
風も出て、もうすっかり寒くなったというのに、甲板に出てみた。
息子と二人でワイワイ興奮をして、風景を眺める。
瀬戸内海は波が全然なくて驚いた。
フェリーはゆったりと真っ赤な夕焼けを背にして進んでいく。
人の姿が全く見えない小さな島々を通りすぎていくと、
ところどころ小さな砂浜があって、
真夏にあんなところで泳いだらさぞ面白いんじゃないかなと思った。
直島が見えてきた。
港にあの、憧れのカボチャがでんと置かれていて
私は大興奮。カボチャ、あったー!
息子もほんとだー!と叫ぶ。
直島の宮浦港につき、私達はカボチャに向かって駆け出していた。
カボチャの中に入って丸い窓の中から、
オレンジから黒へとグラデーションがかかった空をしっかりと目に焼き付けた。
一日じゅう移動していたけれど、息子も旅を楽しんでくれて本当に良かった。
やっと着いた!ということに親子で何より感動したのだった。
移動の記録:
札幌→千歳空港→関西国際空港→天王寺→新大阪→岡山→宇野港→直島・宮浦港